一定の利率で複利運用できると仮定したとき、お金が2倍になるまでの期間は「72÷年利率の数字」でおおよその目安を出せます。年3%なら約24年、年5%なら約14.4年です。ただし、株式投資がその期間で確実に2倍になるという意味ではありません。
この記事では、複利の基本を押さえたうえで、72の法則の使い方と限界、一括運用と毎月積立の違いを計算します。名言の印象だけで期待を膨らませず、元手・入金額・期間・利回りの前提を分けて資金計画に使うことが目的です。
- 72の法則は、追加投資をしない一定利率の複利運用を考える目安
- 積立投資では、新しく入れたお金と運用による増加を分ける
- 実際の株や投資信託の利回りは変動し、損失もあり得る
複利とは?利益を運用に回すと計算の元本が変わる
複利は、得た利益を元本に加えて、次の期間も運用する考え方です。100万円を年5%で運用でき、税金と費用がかからないと仮定すると、1年後は105万円、2年後は110万2,500円になります。2年目は最初の100万円だけでなく、1年目の利益5万円も計算の対象になります。
利益を元本へ組み入れず、毎年同じ100万円に対して5万円の利息を受け取る単利の仮定では、20年後に元本と受取利息の合計は200万円です。年5%を年1回複利で20年間運用する仮定なら約265.3万円になります。どちらも実際の商品を勧める数字ではなく、計算構造の比較です。

株を保有するだけで、毎年同じ利息が付くわけではない
株価の値上がりは預金利息のように一定ではなく、配当も会社の方針や業績で変わります。配当を使えば、その分は再投資されません。配当を再投資する場合も、税金、手数料、買付けの単位や時期によって実際の運用結果が変わります。
投資信託では、分配方針や運用方法を確認します。無分配の商品なら必ず成長する、分配金が出たら運用益が確定して増えた、という判断はできません。受け取ったお金と保有資産の評価額を合わせて見る必要があります。複利という言葉だけで商品を選ばないようにしましょう。
複利の計算式は、利率と再投資の前提が決まれば計算できます。その前提どおりの成果を市場で実現できるかは、別の問題です。
72の法則で2倍までの期間を概算する
J-FLEC「72の法則」でも、複利でお金が2倍になる大まかな期間を求める算式として紹介されています。使う利率は%の数字です。年3%なら0.03ではなく3で割ります。
お金が2倍になる年数の目安 ≒ 72 ÷ 年利率(%の数字)。例:72÷3=24年。元本100万円でも500万円でも、同じ利率・同じ再投資の条件なら、倍になる期間の計算は同じです。
| 仮定する年利率 | 72の法則の目安 | 計算式による期間 |
|---|---|---|
| 1% | 72年 | 約69.7年 |
| 3% | 24年 | 約23.4年 |
| 5% | 14.4年 | 約14.2年 |
| 7% | 約10.3年 | 約10.2年 |
| 10% | 7.2年 | 約7.3年 |
右の列は、年1回の複利モデルを「年数=log(2)÷log(1+年利率)」で解いた理論上の期間です。税金・費用・追加投資は含みません。実際に年末ごとにしか利息が付かない商品の場合は、必要な利息付与回数を整数で確認します。年利率が低いほど、概算との差が気になることもあります。
利率0%や、毎年変動する運用にはそのまま使えない
0%では、追加投資がなければ元本は倍になりません。マイナスの利回りに72を当てはめて、資産形成の年数を考えることもできません。利率が変動する場合は、各期間の増減を順番に反映する必要があります。
「10年で倍にしたいので年7.2%が必要」という逆算も、目標に合う商品が必ず存在することを意味しません。必要な利回りが高すぎるなら、入金額を増やす、期間を延ばす、目標を段階に分けるなど、ほかの条件を見直します。達成のために無理に高リスクの商品を探さないようにしてください。
単利の100の法則と、複利の72の法則を混ぜない
単利で元本と受取利息の合計を2倍にするなら、利率が一定で税金や費用がないとき、「100÷年利率の数字」で必要年数を計算できます。年5%なら20年です。これは利息を再投資しない仮定であり、72の法則の複利モデルとは条件が違います。
単利を短期向け、複利を長期向けの商品分類と考えるのも正確ではありません。どのように利息や運用成果が計算されるかという仕組みを区別し、さらに期間や商品のリスクを別に判断します。複利の方が計算結果が大きいから、その商品が自分に合うと決まるわけではありません。
比較表を作るときは、元本、追加投資、利率、期間、再投資の時期、税金、費用をそろえます。条件が違う数字を比べると、商品の違いではなく計算の違いを見ている可能性があります。
積立投資で資産が増える理由は、入金と運用の二つ
毎月お金を追加する積立では、資産が2倍になったとしても、すべてが運用益とは限りません。最初に100万円あり、その後100万円を入金して評価額が200万円なら、運用で2倍になったとはいえません。投資の成果を見るときは、累計の入金額と評価額を分けます。
積立計算では、各入金の運用期間が違います。初月に入れたお金は長く運用されますが、最後の月に入れたお金にはほとんど運用期間がありません。最終的な積立元本の全額を、最初から20年間運用したものとして計算しないようにします。
毎月3万円を20年間積み立てる計算例
初期資金0円、月末に3万円ずつ、240回積み立てる例です。運用なしの累計入金額は720万円。年率を12で割った一定の月利で計算すると、年率3%の仮定では約984.9万円、年率5%の仮定では約1,233.1万円になります。税金・費用は含まず、結果は円単位でなく万円単位の目安にしています。
| 仮定する年率 | 累計入金 | 20年後の計算額 |
|---|---|---|
| 0% | 720万円 | 720万円 |
| 3% | 720万円 | 約984.9万円 |
| 5% | 720万円 | 約1,233.1万円 |
月利をr、積立回数をn、毎月の積立額をAとすると、月末積立の計算式は「A×{(1+r)のn乗−1}÷r」です。年率を12で割る方式と、実効年率から月利へ換算する方式では数字が少し違うため、ほかのシミュレーターと比較するときは設定を確認してください。
積立は購入時期を分ける方法ですが、利益を保証しません。積立が終わる時期に価格が下がっている場合もあります。目標額だけでなく、使う時期までにどのように現金を確保するかも考えます。
平均利回りだけでは分からない、値下がりの影響
100万円の資産が1年目に20%上がり、2年目に20%下がった場合、120万円から96万円になります。単純に足して2で割った平均は0%でも、資産は元の100万円には戻りません。プラスとマイナスの率を足し引きするだけでは、実際の増減を捉えられないためです。
50%下落した資産を元に戻すには、そこから100%の上昇が必要です。大きな損失は、その後の運用計画にも影響します。長く保有することだけを根拠に、損失が必ず回復すると考えないようにしましょう。個別株では企業の事業環境そのものが変わる場合もあります。
計画には、毎年同じ利回りの線だけでなく、目標直前の下落や、積立を減らす時期も想定します。未来の価格は分からなくても、家計側の備えは検討できます。
追加投資と取り崩しがあると、順番も重要になる
入出金がない一括運用なら、同じ期間の騰落率を掛け合わせる順序だけでは最終値は変わりません。しかし、途中で追加投資や取り崩しがある場合は、値動きが起きる時期によって最終額が変わります。「平均年率が同じなら積立結果も同じ」とは限りません。
使う予定のある資金は、その時期が近づいたら配分を点検します。急にすべてを売るという意味ではなく、必要な支出を運用資産の値動きだけに依存させない計画を考えます。商品の売却から出金までの日数や条件も、事前に確認してください。
税金と費用を入れると、計算結果は変わる
受け取った配当などに税金がかかれば、再投資に回せる額は減ります。売買費用や保有中の費用も運用成果に影響します。すべてを一律の率で引けるとは限らないため、商品と口座に応じた費用を確認します。手数料無料の表示だけで、全費用がないと判断しないようにしてください。
NISAは一定の利益などを非課税にする制度ですが、元本や利回りを保証する仕組みではありません。制度の対象商品、口座の条件、損失の取扱いを確認したうえで使います。NISAと投資商品を同じものとして説明しないことが大切です。
制度確認先:金融庁「NISAを知る」、国税庁「NISA制度」。
複利の計算を資金計画に使う4つの手順
最初に、使う時期と目標額を決めます。次に、家計から無理なく出せる初期資金と積立額を確認します。そのうえで、運用なしの場合と、複数の利回りを仮定した場合を並べます。最後に、下落や積立中断で計画が崩れたら何を調整するかを考えます。
- 使う目的・時期・金額を書き出す
- 元手と積立額を、生活費とは分けて決める
- 0%と複数の仮定、下落する場合を比べる
- 不足するときは期間・目標・入金額から見直す
予定より評価額が増えていても、期待利回りをさらに上げて計画を作り直す必要はありません。逆に減ったからといって、すぐに取引額を増やして追いつこうとするのも慎重に判断します。自分で調整しやすい入金額や支出と、制御できない市場の成果を分けることが大切です。
投資に使う資金は、家計の予備費や近い将来の支出を確保した後に考えます。年数を延ばせば計算額は増える仮定でも、その間ずっと資金を使わずに済むかは家計で変わります。数字の大きさに合う生活を無理に作るのではなく、生活に合う数字で計算してください。
シミュレーターの設定を保存する
計算した結果には、使った利回り、積立額、積立の開始時点、計算期間を添えて残しましょう。翌年の結果が違って見えても、設定を変えただけなのか、実際の入金や運用の差なのかを区別できます。開始時点のメモがないと、都合のよい利回りに置き換えて、当初の目標が順調なように見せてしまうことがあります。
結果の比較には、同じ条件の試算と実際の残高を使います。積立額を減らした月や引き出した月があれば、その金額と時期を別に記録し、市場の影響と家計の変更を分けて振り返ってください。細かい利回りの評価より、続けられる額が変わっていないかを点検することが先です。
よくある質問
72の法則は積立にも使えますか?
毎月の入金がある積立全体の金額を、そのまま72の法則で計算することはできません。各入金の運用期間が違うためです。積立額、回数、入金時期、利回りの仮定を設定した計算を使います。
複利の効果を得るには、配当の高い株がよいですか?
配当利回りだけでは決められません。配当が維持されるか、株価がどう変わるか、税金や再投資の条件も関係します。配当と値上がり・値下がりを含む全体の損益で確認しましょう。
複利に関する有名な名言は、投資の根拠になりますか?
発言の出典を確認できても、それだけで商品の安全性や将来の利益は証明されません。誰の言葉かより、計算の前提と、投資先の仕組み・費用・リスクを確認することが大切です。
まとめ:72の法則は目安として使い、積立は別に計算する
72の法則は一定利率で複利運用する場合の概算です。積立投資では追加資金を分け、税金・費用・価格変動も考えます。計算どおりの利益を前提にせず、条件が変わった場合にも家計が続く計画を作りましょう。
計算・制度の確認日:2026年10月30日。計算例は一定の条件を置いた試算であり、将来の成果を保証しません。


















